コンピュータ 選び方

Macってどうなんですか?

PCを買うとき、Macが気になりますか?パーソナルコンピュータ(PC)を広く世に普及させたのはスティーブ・ジョブズ(Apple創設者)といって差し支えないと思います。

私は前職の半導体メーカー勤務時代は、設計業務(半導体回路の設計に使うCADソフトなどがUNIX向けばかりだった)にUNIXマシン(Sun SolarisやLinux PC)を使い、仕様書作成などにWindows PCを使っていました。はじめてMacを買ったのは2015年、MacBook Pro 13でした。iPhone 5Sを使っていたので興味を持ったことがきっかけです。以降、MacBook Airなどいくつかの機種を買い継いでいます。

Macを語る際、根底にある思想は切っても切れないと思いますので、いくつかのキーワードを元に特徴をお伝えしたいと思います。

パーソナルコンピュータ(PC)の始まり

  1. 1972年、アラン・ケイ(Xerox PARC)が持ち運べるコンピュータを構想
  2. 1975年、Altair 8800(Micro Instrumentation and Telemetry Systems社)発売。CPUは2MHz/8bit。マニア向けガジェット。
  3. 1976年、Apple Ⅰ(Apple社)発売。CPUは1.023MHz/8bit。基盤のみで売られていた。まだマニア向けか。
  4. 1977年、Apple Ⅱ(Apple社)発売。CPUは6502(ファミコンなども採用)、1.023MHz/8bit。ディスプレイなど付属する完成品。カラーディスプレイの採用など画期的な商品だった。
  5. 1978年、Intel 8086(Intel社)発売。5MHz/16bitのCPU。コンピュータの心臓部CPUの原点。
  6. 1981年、IBM PC 5150(IBM社)発売。CPUはIntel 8088,4.77MHz/16bit。MS-DOS(とWindows)の源流。
  7. 1984年、Macintosh(Apple社)発売。マウス登場。GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)幕開け

Appleの功績としては、コンピュータを個人使用可能にした使い勝手を向上させる新たな技術などを次々と導入していった、などが挙げられると思います。Apple創設者スティーブ・ジョブスは『創造的なすべての人々にPCの力を与えたい』という思想があって、Apple ⅠやApple Ⅱを世に出したそうです。

マウスやGUIの開発も素晴らしいものですが、Macがこだわったものを表す言葉の一つが、WYSIWYG(ウィジウィグ)だと思います。

WYSISYG

What You See Is What You Get、の略。直訳すると、『あなたが見たものが、あなたが手に入れるものです』となります。コンピュータの画面に表示されたものが、画面に表示されたサイズそのままに印刷される、といった機能を指す言葉です。

このWYSIWYGなどのこだわりのおかげか、印刷などの分野ではいちはやくスタンダードになり、以降、クリエイティブ(印刷、出版、音楽など)の領域では確固たる地位を築くことになります。

今のMacはどうですか?

以前は、Windows PCやMacには各々に明確に得意分野があり、用途に応じて棲み分けられる状態でした。最近はWindows PCのシェアの高さからか、はたまたソフトウェアの開発環境がマルチプラットフォームに対応してきたからか、あらゆるソフトがWindowsにも展開されるようになり、Macでなければできない仕事分野がかなり少なくなりました

となるとあとはハードウェアの性能差が、Windows PCやMacを選ぶ際の基本となりそうです。Macのラインナップを整理します。

2025年7月時点 Macの商品ラインナップ

モデル名CPU / GPUメモリ
MacBook AirM4(10コアCPU/8コアGPU)〜
M4(10コアCPU/10コアGPU)
16GB 〜 32GB
MacBook ProM4(10コアCPU/10コアGPU)〜
M4 Max(16コアCPU/40コアGPU)
16GB 〜 128GB
iMacM4(8コアCPU/8コアGPU)〜
M4(10コアCPU/10コアGPU)
16GB 〜 32GB
Mac miniM4(10コアCPU/10コアGPU)〜
M4 Pro(14コアCPU/20コアGPU)
16GB 〜 64GB
Mac StudioM4 Max(14コアCPU/32コアGPU)〜
M3 Ultra(28コアCPU/60コアGPU/)
36GB 〜 512GB
Mac ProM2 Ultra(24コアCPU/60コアGPU)〜
M2 Ultra(24コアCPU/76コアGPU)
64GB 〜 192GB

Macは2020年までIntelのCPUを使っていましたが、2020年から独自設計のGPU内蔵型CPU(Mxシリーズ:xには世代の数字が入ります)を採用し始めます。Mxシリーズには、Windows PC(IntelアーキテクチャのCPU)には無い省電力性能や、CPU内蔵のGPUとは思えないほどのグラフィック性能があります。しかし、Mxシリーズ導入のタイミングでメモリもユニファイドメモリとなり、どのモデルであっても購入時以外にメモリ容量を変更できなくなりました

Macのユニファイドメモリ

ユニファイ(=Unify)は『統一する』という意味。CPU用のメモリ、GPU用のメモリ、という構成ではなく、CPUとGPUで同じメモリを共有する、という設計になっています。また、高速化のための工夫として、CPU/GPUが載った基盤に、CPUなどと一緒に直付けされています(=増設など不可)。

次の特徴があります。

  • CPUとGPUの間でのデータ転送などが不要になり高速化・低消費電力化
  • 無駄なメモリ空間の削減(CPUメモリは余っているのにGPUメモリはカツカツ、ということがない)
  • 物理的にも近い位置に配置され、極めて高い応答性を持つ

一見良いことずくめのようですが先程も述べたとおり、「購入時に選んだメモリ容量から変えられない」という極めて重大なデメリットがあります。それからもう一つ、自分で安いメモリを買ってきて増設する、ということもできず、初期搭載メモリを増やそうとすると高くなる、というデメリットもあります。一番手に取りやすいMacBook Air(13インチのディスプレイ、256GBのSSD)でメモリを増設する際の価格差を見てみます。

MacBook Airのメモリ16GB構成の価格は164,800円
MacBook Air 16GBの価格(https://www.apple.com
MacBook Airのメモリ32GB構成の価格は224,800円
MacBook Air 32GBの価格(https://www.apple.com

メモリを16GBから32GBに増やすと+60,000円です。CPU部分もちょっとだけ性能が上がっていますが、CPUをそのままにして安く、ということもできないので、実質的に16GB増やすための費用が60,000円と見て良いと思います。

参考までに、32GBのノートPC向けメモリモジュールの価格を載せておきます。

AmazonでCorsair社のメモリ32GBを買うと約12,000円

出典:https://amazon.co.jp

コルセア社のノートPC向けメモリは約12,000円です。

メモリの読み書き速度など細かい違いはありますが、32GBのメモリモジュールを新しく買っても12,000円でお釣りが出ます。かたや16GB増やすのに60,000円、かたや32GBのメモリが12,000円…。この差があまりにも大きいです。

メモリ以外の部分は?

メモリ以外のMacの良いところ/悪いところも挙げたいと思います。

メモリ増設以外でのMacのいいところ/わるいところ

iPhoneやiPadとの連携が極めてスムーズ。写真・動画の共有なども自動化されていて非常に楽。ブログなどを運営しているならiPhone+Macは良い選択肢。

「Time Machine」というバックアップシステムが標準搭載され、外付けディスクやNASに定期的に差分バックアップが可能。うっかり上書き保存してしまった場合なども巻き戻せる場合がある。

バッテリーの持ちが良い。MxシリーズのCPU/GPUは省電力設計であり、ユニファイドメモリも余計なデータ転送等を抑えるものでこちらも省電力に寄与。Windows PCより処理性能を高めつつ電力消費を抑えている。

BlueTooth機器などとのペアリングなどがWindows PCに比べて格段に速い。

多数派のWindows PCに比べて、Macをターゲットにしたウィルスなどは少ない。無警戒はNGだが、特に仕事使い面での安心ポイントになる。

(個人のセンスによるが)MacBookなど見た目の完成度は総じて高く、ハズレのものはあまりない。

なんだかんだで仕事に使う「Microsoft Office」は、Mac版もかなり互換性高く動くものの、Windows版のほうが機能が上。また、やり取りする相手もMac版Office、などということはほぼなく、やり取り時のデータの互換性の問題も残る。(一人使いする分にはあまり問題ない)

e-Taxなど仕事使いするソフトウェアの一部が、Windows版のみ存在する場合がある。Macで仕事上のやり取りを1から10まで、という状態ではない。(以前よりは緩和されているが…)

印刷・出版や映像・音楽制作などの一部の分野を除き、各業種向け専門のソフトウェアもWindows版のみ、という場合が多い。加えて、印刷・出版や映像・音楽製作もWindows PCで問題なくできるようになった。

性能価格比(コストパフォーマンス)は多くのメモリを積みたい場合を除けば悪くないが、例えば最小構成でもいいから安いPCがほしい、などには対応できない。ある程度の価格帯以上の製品しかない。ラインナップでは圧倒的にWindows PCが豊富。周辺機器についてもWindowのほうが選択肢多め。

ゲームを楽しみたいならWindows一択の状況。Macでも動くものもあるが、Windowsでは動くけどMacは非対応、というソフトが圧倒的に多い。

Macについての総括

総括すると、Officeソフトも動くには動く、Time Machineのお陰でデータのバックアップはかなり手厚くできる、ウィルスの心配も少ない、など、意外と一般的な仕事利用にも優秀な側面はあります。対して、メモリを多く積みたい場合はWindows PCに比べて非常に割高になってしまい、本来は得意分野だった印刷・出版・映像制作などは逆に向かなくなっています。

正直、ブログを運営する(iPhone+Mac)などでなければ、あまりMacはおすすめできないと思っています。その主要因はメモリをたくさん積むと割高になるからです。MxシリーズのCPU/GPUは優秀なだけに、メモリに関する部分が本当に残念でなりません。

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